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税金のことが分かった気になる講座

第52回  「外国の生命保険会社の課税」05/11

「先生、こんにちは」

 久しぶりに遊びに来たのは、生命保険会社の部長さんです。部長は、3ヶ月ごとにやってきては、次の人事異動で転勤になりそうだから…と言ってくるのですが、いっこうにその気配はありません。

「部長が来てくれたという事は、また人事異動の季節ですか」

「嫌だなー、先生。単身赴任も慣れましたから、もうあきらめました。地方暮らしも、これはこれで楽しいもので…」

 そう言いながらも、愛妻家の部長は少し寂しそうです。

「ところでね、ちょっと聞きたいんですが、外国の生命保険会社から受取る保険金には相続税がかからないって本当ですか?」

「唐突になんですか。質問の趣旨が飲み込めないんですが」

「いや、実は先日FPの勉強会で、そんな話が講師から出ましてね。もし本当ならば、契約者にはずいぶんメリットのある話ですし、我々のような日本に生命保険会社にとっては逆風と言わざるを得ないでしょう?」

 部長の質問は、相続税のことを言っているようです。
 通常、個人が受取る生命保険の税務については、保険料の負担者と受取人が誰かによって課税関係が変わります。典型的な、契約者と被保険者が本人で、その受取人が相続人である場合には、相続人一人当たり500万円の非課税枠を超える部分の金額には相続税がかかることになっています。

 そもそも生命保険の受取金は、亡くなった方の固有の財産ではないということで民法上は本来の相続財産ではありません。 しかし、もし生命保険に相続税をかけないとしたら、生前にすべての財産を生命保険にしておけば、相続税はかからないということになってしまいます。 そこで、相続税では「みなし相続財産」として一定金額以上は課税をすることになっています。同様の趣旨で、死亡退職金にも同じように課税をします。

 ところが、この「みなし相続財産」である生命保険金は、外国の生命保険会社については、保険業法に定められた外国保険業免許を持っている会社に限られています(保険業法第2条第8項)。つまり、それ以外の外国の保険会社から受取る保険金には相続税がかからないということになります。

「やはりそうなんですか。ということは、その外国保険業免許を持っていない会社で契約すれば、無税で保険を受取れるということなんですか?」

 部長の目がせわしなく動きます。

「いえ、無税というわけではないんですよ。相続税はかからなくても、ちゃんと一時所得として所得税はかかりますよ」

「なーんだ、無税じゃないんですか。安心しました。じゃあ、相続税がかからないからといって得するということもないのですね」

「でもね、部長。一時所得の計算方法を思い出してみてくださいよ」

「えっと、確か受取った保険金額から払込金を差引いた残りから、特別控除の50万円を引くんですよね」

「そうです。さらにその金額を2分の一にして所得税がかかりますから、実質的には半分にしか税金がかからないんですよ」

 (満期保険金額-払い込み保険料総額-50万円)×1/2という算式は一時所得の計算式ですが、生命保険の場合には通常、満期保険金の受取のときに使用されます。ところが、外国保険業免許を持っていない保険会社の場合には一時所得になるということは、住民税を合わせて最高50%まである課税が、25%程度まで下がっているということですから、相当な違いがあります。

「やっぱり不公平じゃないでしょうか、先生」

「ええ、不公平だと思いますね。でも、あくまでも保険金を受取った時に今のままの税制だとしたらという前提ですけどね」

「どういうことですか?」

「つまり、仮に相続税がかからないことがメリットだとして、誰かが外国の保険会社で契約をするとしますね。でも、実際に相続があるのは何年先なのかわかりません。もしその時に税制が変わっていて、やはり相続税の対象になっていたとしたら何の意味もありませんからね」

「税制改正もありうるということでしょうか」

「当然、課税当局も問題点は把握しているでしょうし、著しく課税の公平という点から外れるということであれば、いずれは改正される可能性もあると思いますよ」

 タックスプランニングというと、「節税」という言葉と同義語に使われることも多いようです。しかし、税務については、常に税制改正も将来ありうるという点について考慮をしておかなくてはなりません。  この一時所得という点に目をつけ、わざわざ国外で契約をするということもあるようですが、税制上の効果がなくなってしまった時に、やらなければよかったと公開するような対策であれば問題です。そもそも、現在の段階でも一時所得であるということも税務調査の段階では問題になるであろうと指摘している専門家もいます。

「じゃあ、我々はそれほど心配をしなくてもいいということですね」

「そのとおりです。一時所得がメリットだというのであれば、契約者が子供、被保険者が親、受取人が子供という契約でも一時所得にはなるじゃないですか」

「それもそうですね」

 これは、一時所得プランということで、契約形態を工夫したものです。難点は、契約者の子供に保険料を支払うだけの資金がない場合が多いということです。そこで、親から子供に保険料相当分を贈与して、その資金を利用して子供が契約をするようにします。

「どうです?基本をもう少し掘り下げれば、あまり奇をてらったことまで考えなくても対策はできると思いますよ。それに部長、そろそろキャンペーンの時期なんでしょう。こんなところで油を売っていてもいいのですか?」

「あ!?次のアポの時間だ。じゃあ、先生さよなら!」

 慌しく部長が出て行きました。相談に乗る側としては、常にもっとも効果が高い提案を出さなくてはと思ってしまうものですが、将来のリスクを考えてみれば、おのずと「安心」という言葉に行き着くのではないでしょうか。




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